Image Analysis & Rheology
of Edible Soft Matter
食べるソフトマターの画像解析とレオロジー:
装置を自作・改良しながら、さまざまな食品系の力学物性と組織構造観察を組み合わせた組織構造レオロジー研究に取り組んでいます。研究のキーワードは、ソフトマター、レオロジー、そして、画像解析です。画像解析では、試行錯誤を繰り返しながら新しい解析手法の構築に取り組んでいます。また、従来のレオロジー測定に画像解析を加えた新しい計測手法の開発にも取り組んでいます。
研究室では大学院生を募集しています。未経験者も大歓迎です。興味があればぜひ連絡をください。
Biorheology (バイオレオロジー)
レオロジー (Rheology) は、さまざまな物質の流動や変形と力の関係を調べる科学の一つです。
流体力学と違い、対象とする物質は内部構造が単純なものから複雑なものまで多種多様です。このため、レオロジーは、タイヤ・プラスチック・液晶などの材料やこれらを使用した工業製品、化粧品や食品等の日用品から、スライム・粘土・マジックサンドのようなおもちゃまで、幅広い領域の製品開発やその管理に活用されています。最近では、細胞やその集団が作り出す協働現象を理解するための研究手法としても応用されています。
バイオレオロジー (Biorheology) はレオロジーの中の一分野で、あらゆる動植物、およびそれらを構成する物質を対象としたレオロジーを指します。したがって、細胞、臓器、血管等の器官はもちろん、たんぱく質やDNA溶液、あるいはでんぷん、ゼラチン、牛乳、チーズなどの食品、他には魚やきのこなど、我々の日常生活に深く関係したものが研究対象となります。
我々の研究室の目的は、さまざまな食品の複雑な流動・力学挙動を、光学顕微鏡で見えるような大きさの内部構造変化の観点から解き明かし、これらの成果を産業応用に役立てることです。
Research
牛乳のゲル化挙動、多糖類の綿菓子化技術の開発、スポンジ骨格の形態緩和、多糖類系エスプーマ (泡)の破断挙動、餡子のレオロジー特性(降伏挙動など)を調べています。レオロジー計測(粘性率や弾性率測定)と同時に構造観察を行うことにより、さまざまな食品のユニークな内部構造と硬さや柔らかさの関係を知ることが我々の研究室の大きな目標です。
それを知るために必要な装置の設計・作成や新しい実験手法の開発も行っています。ここには現在取り組んでいる研究テーマをあげています。
Milk Science
Gelatin+Polysaccharide
Cotton Candy
Structured Food
ヨーグルトもチーズも牛乳から作られますが、これらの乳製品の形成過程はどのように違うのでしょうか?あるいは、どの程度同じなのでしょうか?
主に画像解析技術を用いて、ヨーグルトカード・チーズカード形成過程を調べています。これまでに、ヨーグルトカード形成がワンステップで進行するのに対し、レンネット凝集によるチーズカード形成は二段階で進行するという違いがあることを見つけました。また、カゼインミセルが作るネットワーク構造が、数μmのオーダーで不均一であることがわかりました。
多糖類の綿菓子を作れるのでしょうか?
ザラメから作られる綿菓子の最大の特徴は、その柔らかさと口溶けの良さにあるといえます。ザラメに代わる多糖類の綿菓子を作り出し、新しい機能性食品を生み出せないか考えています。
現在、ゼラチンをベースに綿菓子を作成する基盤技術開発をしています。今のところ、ゼラチンを原材料として綿菓子を作成していますが、他にも多糖類で綿菓子状食品を作り出せるのかを検討しています。
スポンジは、パンの骨格のみを抽出したパンのモデル物質であると言えます。スポンジを変形させたときに、内部の骨格構造がどのように変形するか画像解析により微視的に調べることにより、パンの"すだち"が食感に及ぼす影響を調べています。
メソスケールの内部構造を持つ食品のダイナミクスの典型的問題として研究を進めています。
画像解析により、圧縮時・圧縮開放時の骨格構造の変化を調べています。スポンジで検討した手法を、パンに応用していく予定です。
Espuma (Edible Foam)
Concentrated Fat Globules
Concentrated Starch Suspensions
エスプーマはスペインのレストラン「エル・ブジ」で開発された泡状食品を作り出すための調理法の一つです。泡は、食品に多く見られるユニークな系です。
ホイップクリームや多糖類水溶液を用いてエスプーマ(泡)を調整し、そのレオロジー的な特徴を画像解析により調べています。
上の写真は、振動剪断変形下における気泡の運動の軌跡を表しています。振動による力学特性の変化と、気泡の形状や位置のような内部構造変化とを比較し、泡のレオロジーを調べています。
生クリームをシャカシャカ振るとバターになることはよく知られています。このバター化現象は、クリーム中の脂肪球の合一により進行すると説明されています。みなさんも、これまでに試してみたことがあるかもしれません。
生クリームに剪断を加え、徐々に脂肪球の合一が進行していく時、その構造はどのように変化していくのでしょうか?また、その際のレオロジー特性はどのようなものでしょうか。
レオロジー測定と同時に構造観察を行い、脂肪球の合一挙動とバター化までの詳細な過程を調べています。
餡子はでんぷん粒の濃厚系、そして、羊羹はでんぷん粒と高分子からなる粒子濃厚系+高分子ネットワーク系の混合系です。粒子分散系のレオロジーはよく調べられていますが、ブラウン運動をしないような大きな粒子濃厚系のレオロジー特性は未だによくわかっていない研究課題の一つです。特に、餡子の粒はネバネバしていて粒子同士がくっつきやすい
性質を持ちます。このような系のレオロジーはほとんどわかっていません。
粘弾性測定に加え画像解析を応用することにより、変形を与えた際の巨大粒子懸濁系の運動の様子を調べています。
Facilities
市販の装置同士、あるいは市販の装置に自作のパーツなどを組み合わせ、装置を改良しながら実験を進めています。
また、必要なパーツ(透析セル・流動セル等)を自作し、オリジナルなデータを出せるように心掛けています。
ここには我々が普段使用している主要な装置のみを掲載しています。
Microscope
現在は、主に牛乳のゲル化現象の観察に利用しています。動画を撮影し解析することで、ゲル化の様子を調べることができます。光源にはLEDライトを使用しています。
牛乳のゲル化現象の結果は全てこの顕微鏡で得たものです。
Several Shear Cells
with
Stereo Microscope
ステレオ顕微鏡に取り付ける各種変形治具を自作しました。回転流動・引張変形・振動変形を加えながら、構造観察ができます。この他、透析中の構造観察を行うための顕微観察用透析セルもあります。
OHNATECH
Rheometer
Stereo Microscope
この装置では餡子やエスプーマ(泡)の流動観察・綿菓子の引張変形の観察をしています。他にもさまざまな系の構造観察に使用することができます。
ここで動画を撮影し、さまざまな解析を行います。
Rheo-Microscope
生クリームのバター化現象のその場観察・餡子やエスプーマ(泡)の降伏挙動観察に使用しています。構造観察だけではなく、レオロジー測定も行っています。
μmからmmのスケールで構造観察とレオロジーの同時測定が可能です。
Strain-Controlled Rheometer
Dynamic Light Scattering With Shear Cell
各種レオロジー測定に使用します。
現在は主に液晶のレオロジーを調べるために使用しています。
液晶以外にもさまざまな系のレオロジー測定が可能です。
せん断変形を与えて動的光散乱測定を行うことができます。現在、実験室に運び込めないために倉庫で眠っていますが、必ず現役装置として復活させます。
学生居室 (コラボルーム)
ガラス円筒に試料を封入し、レオロジー測定を行うことができます。従来のレオメーターとは異なり、常にガラス内の試料を目視観察できるのが大きなメリットです。
牛乳のゲル化現象やEspuma(泡)のレオロジーなど、時々刻々と構造が変化するような系では常に試料の状態を確認できるため、非常に重宝します。
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埼玉県朝霞市岡48-1
東洋大学 食環境科学部
藤井 修治
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